【2025年6月施行】熱中症対策の義務化!事業者が今すぐやるべき3つのこと~就業規則への備えも忘れずに~
こんにちは。フォーウィン社会保険労務士事務所です。
6月に入り、日差しが日に日に強くなってまいりました。人事労務ご担当者の皆様におかれましては、夏の労務管理についてご検討を始める時期かと存じます。
さて、既にご存じの方も多いかと存じますが、2025年4月1日(一部規定は6月1日)より改正労働安全衛生規則が施行され、事業者の熱中症対策が一部義務化されました。これまでは「望ましい措置」とされていたものが、法的な「義務」へと変わり、違反した場合には罰則が科される可能性もあります。
従業員の安全と健康を守り、企業の安全配慮義務を果たすためにも、今年はこれまで以上に万全な対策が求められます。そこで今回は、事業者が「今すぐやるべきこと」を3つのポイントに絞って分かりやすく解説いたします。
ポイント1:何が「義務化」されたのか?正確に理解する
今回の法改正で、特に重要なのは「暑さ指数(WBGT値)」を用いた管理が求められる点です。具体的には、以下の措置が義務付けられました。
- 暑さ指数(WBGT値)の把握 WBGT値を測定できる機器(WBGT計)を用いて、作業場所の暑さ指数を把握する義務。
- WBGT値に応じた措置の実施 基準値を超える場合に、作業時間の短縮、休憩時間の確保、作業場所の変更、冷房設備の設置、水分・塩分の摂取を促すなどの措置を講じる義務。
- 作業を管理する者の選任 労働者を指揮する者(現場監督やリーダーなど)に、上記の措置を適切に実行させる義務。
- 労働者への教育 熱中症の症状や予防策、緊急時の対応などについて、従業員に周知・教育する義務。
これらの義務は、建設業や製造業といった屋外・高温作業が中心の現場だけでなく、冷房設備のない倉庫や、調理場で火を扱う飲食店など、多くの事業場が対象となり得ます。
ポイント2:具体的な対策を「計画・実行」する
法改正のポイントを踏まえ、企業は以下の3つのステップで具体的な対策を進めましょう。
- 1.体制の構築と計画策定
まずは自社のどの場所・どの作業がリスクが高いかを洗い出しましょう。その上で、WBGT計の準備、作業ごとの休憩基準などを盛り込んだ「熱中症予防計画」を策定し、作業管理者を選任します。
- 2.従業員への周知・教育
朝礼やミーティングの場で、その日のWBGT値と注意点を共有する、予防策に関する資料を配布するなど、全従業員の意識を高める取り組みが不可欠です。
ポイント3:就業規則を「見直し・整備」する
熱中症対策をその場限りの対応で終わらせず、会社の公式なルールとして「就業規則」に定めておくことは、労務リスク管理の観点から非常に重要です。
就業規則に規定することで、会社としての安全配慮への姿勢を明確に示すことができ、万が一の労災発生時にも会社の対応を客観的に証明する助けとなります。
<就業規則への規定例>
- (服務規律)作業中の水分補給の許可
- (安全衛生)WBGT値に応じた作業中止基準や休憩付与に関する規定
- (緊急時の対応)熱中症発生時の報告・連絡体制
これらの規定を設けることで、ルールの形骸化を防ぎ、組織全体で安全衛生に取り組む文化を醸成できます。
従業員の健康は、企業の最も大切な財産です。熱中症対策の義務化は、事業者にとって負担が増える側面もありますが、従業員が安心して働ける職場環境を整備する絶好の機会と捉えることもできます。それは従業員のエンゲージメントを高め、ひいては企業の生産性向上にも繋がるはずです。
フォーウィン社会保険労務士事務所では、今回の法改正に対応した就業規則の見直し・作成はもちろんのこと、職場環境改善のご提案も得意としております。
「自社の場合はどう対応すれば良いか分からない」など、ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。