採用の前にやるべきこと

「従業員が辞めてしまった。採用しなければ。」
もちろん、穴が空いた分はすぐにでも埋めないと他の従業員に負担がかかってしまい、さらなる離職を生むことになります。
しかし、もっと重要なのは離職理由を把握することです。 せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまってはコストがかさむばかり。

なぜ、辞めてしまうのか?

平成29(2017)年度に内閣府が行った、就労等に関する若者の意識を調査した「子供・若者の意識に関する調査」では、「仕事が自分に合わなかったため」が最も多く、次いで「人間関係がよくなかったため」、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」、「賃金がよくなかったため」、「ノルマや責任が重すぎたため」と続いています。

特集 就労等に関する若者の意識

次に、エン・ジャパンが行った「退職のきっかけ」実態調査ではやりがい・達成感を感じないが最も多く、次いで給与が低かった、会社の将来に疑問を感じた、人間関係と続きます。

1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査

さらに、エン・ジャパンの「退職理由のホンネとタテマエ」調査によると、人間関係がダントツで第1位、次いで評価・人事制度、給与、社風や風土、拘束時間となっています。

退職理由のホンネとタテマエ

調査する対象によって若干のばらつきが出ますが、概ね労働時間・人間関係・仕事の内容・給与となっています。
では、自社の離職理由はどうなっているでしょうか?
まずは過去の離職状況の統計を分析してみましょう。
年代・男女・継続勤務月数・離職理由など。
ただし、従業員が回答する離職理由は本音ではない場合があるので、本当の理由については推測する必要があります。 
さらに、現従業員に対し満足度調査を行いどのような不満があるのか傾向を把握します。

「働きがい」と「働きやすさ」の2軸で考える

調査の結果、離職予備軍の不満が明らかになってきます。
しかし、対症療法的な対策を打ってもさほど効果は望めません。
人材の採用と定着についての施策は「働きがい」と「働きやすさ」の2軸に分けて考えることでより効果的な対策になります。
個人のモチベーションやロイヤリティは一つの事柄だけで成り立っているわけではありません。
「働きがい」と「働きやすさ」の二つの側面を考慮することが長期的な人材確保につながります。

まず「働きがい」については、成長や達成感について検討することになります。
例えば理念教育により、仕事の意味や意義を浸透させることで高いモチベーションを獲得することができます。
キャリアパスを見直して新しい能力を獲得し、新しい仕事にチャレンジさせることで成長欲求を刺激します。
権限委譲を行い、責任のある仕事を与えることで承認欲求を満たします。
高い目標を与え、チームで困難を乗り越えた時、達成感を味わうことが出来ます。
働きがいについては自社の制度設計を見直すことで従業員のポジティブな反応を引き出すことが出来ます。

つぎに「働きやすさ」についてはどうでしょうか?
「働きやすさ」についての検討は規律や規則・人間関係・労働条件が重要な項目になります。

離職理由のアンケート調査で常に上位の労働時間については、社会問題化しており経営者としても頭の痛い問題です。
この労働時間の問題は生産性と深く結びついており、生産性の向上が最も有効な手段です。
生産性の向上はITによるところが大ですが、労働の課題としても生産性の向上に資することは十分可能です。
プロセスの改善により生産性の向上を進め、従業員の能力の向上によりさらに生産性の向上が見込まれます。
生産性の向上とは無駄を省くというだけでなく、付加価値の増大という方向もあります。
付加価値の増大は経営の重要課題であり、つまり労働時間問題とは経営課題でもあるという事になります。

人間関係問題、こちらも離職理由のアンケート調査で常に上位にあげられています。

組織の中では自分の意見と対立する意見が必ず存在します。
そのような時、自分の主張をうまくプレゼンテーションできない、また他者に対する理解が十分でないという時に対立が表面化します。
自身の主張に他者の意見を取り入れて第3の道を模索する能力、対話力を向上させることで、組織の対立が建設的ものになります。
このコミュニケーションの問題を個人の能力としてとらえると非常に難しい問題ではないでしょうか?
内向的な人、外交的な人、個人の特性は様々です。
一様にコミュニケーション能力の高い人(外交的な人?)ばかり採用しても、組織としてはうまくいきません。
組織は多様化することで、成長するものです。
ではコミュニケーションの問題をどのように解決するかというと組織の問題と捉え、仕組みを整えることで解決を目指します。

ただ、この働きやすさの改善には企業風土が大きく関わっており、一朝一夕で解決できる問題ではありません。
トップのコミットメントが重要です。
強い決意としっかりとした設計で働きやすさの改善を目指してください。
そして、この「働きがい」と「働きやすさ」の改善に取り組むことにより、離職率が大幅に低減することになります。

離職率の問題に取り組むことで、「働きがい」と「働きやすさ」のバランスがとれた会社は採用でも求職者を引き付けることが出来ます。
自社の従業員の満足度を引き出し、従業員がやる気をもって仕事をしている点をアピールしていけば、そこで新たに働きたい人が募集に応じる可能性はより高くなります。