その採用面接、実はNGかも?聞いてはいけない「不適切な質問」と対処法
企業の成長に欠かせない、新たな人材の採用活動。面接官は、自社にマッチする優秀な人材を見極めようと、様々な質問を投げかけます。
しかし、応募者の緊張をほぐそうとした雑談や、良かれと思ってした質問が、実は法律で禁止・不適切とされている「NG質問」に該当し、思わぬトラブルに発展するケースが少なくありません。
「うちは大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちにリスクを冒している可能性があります。
この記事では、採用面接で聞いてはいけない不適切な質問の具体例と、企業が取るべき対策について、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。公正な採用選考は、企業の信頼性を高め、未来の従業員との良好な関係を築く第一歩です。
なぜ「聞いてはいけない質問」があるのか?
採用選考の基本的な考え方は、「応募者のもつ適性・能力が、求める職務を遂行できるかどうか」を基準に判断することです。
応募者の基本的人権を尊重し、就職の機会を均等に保障するため、本人の適性・能力とは関係のない事柄で採否を判断してはならないと法律で定められています。
これらの事項について質問すること自体が、応募者に「こんなことを聞かれるなんて、思想や性別で差別されるのではないか」という不信感や不安感を与え、企業の評判を損なうリスクにも繋がります。
【要注意】採用面接でのNG質問 具体例リスト
ここでは、厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」に基づき、特に注意すべき質問をカテゴリー別に紹介します。
1.本人に責任のない事項
本籍地や出生地といった、本人の努力では変えられない事柄についての質問は、部落差別など特定の差別につながる可能性があるため禁止されています。
【NG質問例】
「ご出身はどちらですか?」(「生まれ故郷は?」という意味合いで)
「ご両親の出身地はどちらですか?」
(応募書類を見て)「この地名は何と読むのですか?」
2.本来自由であるべき事項(思想・信条・宗教など)
思想・信条、宗教、支持政党などは、憲法で保障されている個人の自由です。これらを尋ねることは、思想・信条の自由を侵害する行為にあたります。
【NG質問例】
「ご信仰の宗教は何ですか?」
「どの政党を支持していますか?」
「尊敬する人物は誰ですか?」(思想を探る意図と捉えられる可能性)
「愛読書は何ですか?購読している新聞はありますか?」
3.男女雇用機会均等法に関わる質問
特に女性応募者に対して、結婚や出産の予定を尋ねることは、性別による差別(セクシュアルハラスメント)とみなされる可能性が非常に高い質問です。
【NG質問例】
「結婚のご予定はありますか?」
「お子さんが生まれた後も、仕事は続けるおつもりですか?」
「彼氏はいますか?」
【意図の伝え方】
長く働いてほしいという意図を伝えたいのであれば、「当社のキャリアプランについてですが…」と、性別に関係なく会社の制度やビジョンを説明する形にしましょう。
4.プライバシー性の高い質問
家族構成や生活環境などは、応募者の適性・能力とは直接関係のない、プライバシー性の高い情報です。
【NG質問例】
「ご家族の職業や学歴、収入について教えてください」
「お住まいは持ち家ですか?賃貸ですか?」
「ご自身の健康状態について、何か持病はありますか?」(業務遂行に直接影響のない病歴の質問はNG)
もしNG質問をしてしまったら?応募者が自ら話したら?
意図せず不適切な質問をしてしまったり、応募者が自らプライベートな情報を話し始めたりするケースもあります。その際の対処法を知っておくことも重要です。
<面接官がうっかり聞いてしまった場合>
すぐに「申し訳ありません、今の質問は不適切でした。選考とは一切関係ありませんので、お答えいただく必要はございません」と伝え、明確に撤回・謝罪します。
<応募者が自ら話し始めた場合>
「プライベートなことですので、お話しいただく必要はありませんよ」と遮るか、話を深掘りせずに聞き流し、「その件は選考の判断材料にはいたしませんのでご安心ください」と伝えましょう。
重要なのは、「その情報は採否の判断材料にしない」という姿勢を明確に示すことです。
信頼される企業であるために
採用面接は、企業が応募者を評価する場であると同時に、応募者が企業を評価する場でもあります。不適切な質問は、企業のコンプライアンス意識の低さを示し、貴重な人材を逃すだけでなく、SNSなどで拡散されれば企業イメージを大きく損なうことにもなりかねません。
公正な採用選考の知識を身につけることは、採用リスクを回避し、応募者との信頼関係を築くための重要なステップです。